Geophysical Research Group
FNCT

昭和62年度福井工業高等専門学校教育後援会研究奨励金による研究完了報告書

甲楽城断層についての研究
指導教官 岡本 拓夫 教官

3年電気科 有田 健 3年電気科 蔵本 守功

1はじめに


 甲楽城断層は、越前岬から海岸沿いに南東方向に伸びる活断層で、その存在は 地形から容易に判別できるものである.ランドサットによる中部地方の地形図を 見ると、阿寺断層系、御母衣断層系、根尾各断層系、柳瀬一老毛断層系の四つの 北西南東方向の大断層が容易に織別できる.甲楽城断層は、その四つ断層系の最 も西に存在する柳潮一義竜断層系延長に存在し、北陸トンネル屈削中にその断層 面が現われたことからもその存在は碓認きれている.今まで、甲楽城断層に地表 観測点は存在していなかったのであるが、今回はじめて設置された。ここから得 られるデータを解析していくと、将来有意義な発見があるのではないかと期待し ている。

2地震観測



 昨年11月に、岡本教官はその甲楽墟断層の直上である福井県河野村杉山に臨 時微小地震観測点を設置した。その詳細は参考文献1に書かれているが、ここで も少し触れておく.

2−1観測場所


 観測点設置場所は、東経138°1′21.3″、北緯35°52′8.4″、高さ320mの採石場跡 である(Fig.1)。現地は、切り立った断崖絶壁になっている。眼下に海が 間近に迫り、晴天の日には敦賀半島から丹後半島までが一望に見渡せる。観測点 の周囲は森林で、とても静かである.そのため、自動車などの人為的ノイズはと ても少ないと思われる。

2−2 観測機の設置


 昨年6月、岡本教官と前渾技官と私達及び、旧2Bの数名の学生は、地表計を 設置するための土台を作りに杉山へいった.あいにくその日は天候が芳しくなく、 始めた当初は小雨がばらつく程度だったのであるが、後から、土砂降りとなり、 コンクリートをこねていた私達は、とても閉口した。それでもなんとか作り上げ、 シートを掛けて早々に退散した。
翌7月、地表計の設置に岡本教官と前渾技官と、その他大勢で、地表計の設置 にいった。危ぶまれていね土台の崩れや、凹凸などはなく、きれいに仕上がって いた.クリノメータで偏角六度WESTで補正し、正北とした.それに合わせて、 南北、東西方向の地農計をセットした.レベルで、水平面を出し、上下動め地表 計をセットした.紋置が終わり、観測機との接続が終わっ危後で、とび跳ねて (人工地震)、正常に作動しているかどうかチェックした.
1987年7月17日から観測を開始し、その後、最低2ケ月に1度は記録用 のテープを替えにいっている.

2−3 観測装置


 使用されている地震計は、勝島製作所のもので、固有周期1.0秒、感度は、 1.5V/Kine、速度型換震機である.
 地震観測機として用いられているのは、OM−4と呼はれているものである。 OM−4については、参考文献2に辞しく述べられているが、ここでもちょっと 触れておこう.
 OM−4は京都大学防災研究所の尾弛助教授と松村助教授が共同で設計、開発 したイベントレコーダである.OM−4のOMとは、尾池助教授と松村助教授の 頭文字を取って付けられた名前である.OM−4は4チャンネル同時に記録でき、 この観渦点では、1チャンネル目は上下動の変位、2チャンネル目は上下動の速 度、3チャンネル目は南北の変位、4チャンネル目は東西の変位の記録となって いる。
 OM−4の特徴としては、記録が音響用カセットテープに記録でき、記録コス トが安い、1本のテープに600個もの地震が記録できる(120分テープの場 合)、装置が小型で持ち運びが便利である、NHKのFM放送の時報により、時 計の自動較正をやっており、時間の誤差が小さい(0.1秒以内)、などが挙げ られる.地表の紀録は、その地表の震源を正確に決めるために、観測点への地表 波の到着時刻が正確でなければならないので、このようになっているのである。

2−4 地震波形再生機


 ところが、今までは、その記録された波形の再生が容易でないという欠点があっ
た.そこで、今回、河本教官はその再生を容易にする再生機および、再生用ソフ トを京都大学防災研究所付属北陸微小地震観測所の平野氏と共同開発した。これ らのことは、参考文献3に述ペられている。ここでも少し触れてみよう。
 OM−4の記録は、256Hzでデジタルサンプリングされ、およそ16kH Zに圧縮し、テープに記録されている.そして、データの区切りをあらわすセパ レータとして、8kHzの信号が記録されている.再生機は、パーソナルコンピュ ータ(NEC製PC−9801VM以降のシリーズでCPUがV30でシステム クリックが10MHz)にA/Dコンバータ(T・0データ機器製)を介して接 続され、記録の8kHzを感知してその終わりをトリガーとして再生を開始する. そのデータはコンピュータを介してハードディスク(TEAC製)に記録してい る。このようにして記録された地震波形データは、あとから色々に解析できる. 例えば、現在は、波形をXYプロッタ(ローランド製)に描画している。

3   研究内容


3−1 再生機の製作


 まず我々は、再生機の製作から曹手した。これを作り始めたころは、試作機が 出来たはかりの頃であった.試作機では手動によってカセットテープレコーダか ら再生機を通してコンピュータへデータ出力を開始するので、この動作をパーソ ナルコンピュータによってコントロールできるように改良が行なわれ、我々は、 これを改良第1号機とした.回路図を参考までに、Fig.2にのせておく.
 我々は、まずは基板の焼き付けから開始することになった.再生機の基板は3 枚に別れていて、1つが、カセットテープレコーダ(ソニー製)のコントロール 基板で、もう1つは、時計のコードをFM変調から復調する復調回祐、そしても う1つは、波形を増幅する増幅回籍である.復調回路、増幅回路は故製の基板を 改造して流用することにし、コントロール基板のみの焼き付けからスタートする ことにした。
 焼き付けをすることは、我々にとってはじめてのことなので、スクリーンシー トに回路図をプリントすることと、回路図の焼き付けを、岡本教官と前澤技官に 手伝って頂いた、。焼き付けの方法は、シルクスクリーン法を用い、銅版上に回路 を起こす方法を使った。この起こした回格の回路図は、岡本教官と、京都大学防 災研究所の尾池助教授とが共同設計したものである。
 プリント基板をエッチングをするのにエッチング液として塩化第二鉄を使用す るので、この際、塩素系の蒸気が若干でて、コンピュータなどの接点を傷める。 そのため、エッチングはできる限り外でやった方がよい。我々が初めてエッチン グしたころは、二月の寒い頃だったので液がなかなか反応せず、お湯を持ってき て反応を速くした。その為に、エッチングをする時間が短縮したが、速く反応し すぎた基板もあり、銅を溶かしすぎて余りきれいに仕上がらなかった。それと、 一度にたくさんの基板をエッチングする時には、銅の溶ける速さにそれぞれ差が あるので、一枚一枚気をつけて見ていた方がよいと思われる。
 次に、ケースを作った。一枚のアルミ板をきって制作しなが、うまく折線上を 曲げることができず、設計図とだいぶずれてしまい、製作にたいへん時間がかかっ てしまった.そのほか、できるだけコンパクトにまとめたので特にメタコンヘの 配線がやりにくかった。
 問題点として、三枚の基盤を使うと基盤間の配線が複雑になり配線上混乱して しまうということがあった。そこで、一枚にまとめることによって配線を少なく し、よりコンパクトになるように改良を行い、これらを、現在、動作テスト中で ある。
 この再生機を使用して縛られぬ波形の一例をFig.3、Fig.4に示す。 この波形は、京都大学防災研究所付属北陸微小地震観測所の平野氏の制作したソ フトウェアに、]−Yプロツタ出力ルーチンを付け加え、それによって出力きれ たものである.
 Fig.3の波形は、杉山観測点で縛られる、一般的な波形である.Fig. 4の波杉は、12月13日に起こった有感地震の波形である.この地蔑は、敦賀 と福井で震度2であっ泡.杉山におかれている観測機は、微小地表観測用である ので、このような大きな地震では振り切れてしまうのである。8−2 東輝決定プログラムの作成

3-2震源決定プログラムの作成。


 地震はまずは煮輝がわからないことには解析のしようがない.そこで、杉山の データを使い震源決定をすることにした.しかし、最初から難しい方法でやろう と思ってもできないので、まずは一番簡単なのからやろうと思い、岡本教官にた ずねてみたら、「4点P法」が一番簡単だといわれたので、それをすることにし た。
 4点P法は、4地点のP波の到着時刻と、4地点の位置によって震源を決定す る方法である.いかにその方法のを述ペる。
まず、
1番日の位置を(x1,y1,Z1)
2番目の位置を(x2,y2,Z2)
3番目め位置を(x3,y3,Z3)
4番目の位置を (x4,y4,Z4)
地表波のP波の、到着時間をそれぞれ、t1.t2.t3.t4とする.


 そして、地表の起こった位置を(x,y,Z)とし、地焉の起こった時間をt
とする.
地震のP波の速度をVpとして方程式をたてると、
 両辺を二乗して展開し、]=2x,Y=2y,Z=2z,U=Vp,
とおくと、
 ここで、Zl,Z2,Z3,Z4は観測点の地表からの高きである.はとんどの観
測点は地表近くにあり、一番高いものでも、3〜400メートルである.また、
震源の位置の誤差は、約1kmであるので、高低差の3〜400メートルは誤差
の範囲内である.そこで、Z1,Z2,Z3,Z4を0とおいて上式を書きなおすと、
こうして、],Y,X,Wが未知の4元1次方程式となったのである.
この方程式を解くプログラムを、BASICで書いてみた.



1000 '***********************************************************
1010 '*                                                         *
lO20 '*           4点Pによる震源決定プログラム             *
lO30 '*                                             *
1040 '***********************************************************
1050 '
1060 DIM A(4,5)
1070 CLS 3 : WIDTH 80,25
1080 FOR VP=4 TO 9 STEP .2 : LPRINT : LPRINT USING "VP=###.##";VP
1090 RESTORE 1640 : FOR I=1 TO 4
1100 READ NS : READ DX,DY,T
1110 PRINT N$;"s arrival time=";T
1120 LPRINT NS; : LPRINT USING "s arrival time=###.##";T
1130 A(I,5)=DX*DX+DY*DY-VP*VP*T*T
1140 A(I,1)=1 : A(I,2)=DX:A(I,3)=DY : A(I,4)=T
1150 NEXT

1160 FOR I=2 TO 4
1170  FOR J=1 TO 5
1180   A(I,J)=A(I,J)-A(1,J)
1190  NEXT

1200 NEXT
1210 FOR I=2 TO 3
1220  IF A(I,I)=O THEN GOSUB *SUB
1230   FOR J=l+1 TO 5
1240   A(I,J)=A(I,J)/A(I,I)
1250   NEXT
1260 A(I,I)=1
1270  FOR J=I+1 TO 4
1280    IF A(J,I)=O THEN 1330
1290     FOR K=I+1 TO 5
1300     A(J,K)=A(J,K)/A(J,I)-A(I ,k)
1310     NEXT
1320   A(J, I)=O
1330   NEXT

1340 NEXT
1350 lF A(4,4)=O THEN PRINT Ml can't!!" : BEEF : STOP
1360 A(4,5)=A(4,5)/A(4,4)
1370 A(4,4)=1
1380 FOR I=3 TO 1 STEP -1
1390  FOR J=4 TO I+I STEP -1
1400   A(I,5)=A(I,5)-A(I,J)*A(J,5)
1410   A(I,J)=0
1420  NEXT

1430 NEXT
1440 WW=A(4,5)*A(4,5)/VP/VP-A(2,5)*A(2,5)-A(3,5)*A(3,5)-A(1 ,5)*4
1450 lF WW
1540 *SUB

1550 WO=0 1560 FORJ=I+lTO4 1570 IF A(J,I)<>O THEN WO=J 1580 NEXT 1590 IF UO=O THEN PRINT "l can't!!";:BEEF:STOP 1600 FOR J=1 TO 5 1610 SWAP A(I,J),A(WO,J) 1620 NEXT 1630 RETURN l640 DATA HKJ,19.17,-6.91,52.36 1650 DATA FKJ,11.10,10.45,54.82 1660 DATA IMJ,27.36,-22.35,52.71 1670 DATA SUJ,2.04,-14.53,51.699


 このプログラムを走らせると、震源決定のために採用した4観沸点の地表波の P波の到昔時刻をきいてくる.その4観測点とは、北陸地震観測点(HKJ)、 福井地震観測点(FKJ)、今庄地震粗測点(IMJ)、そして、杉山観測点 (SUJ)である.各観測点の位置は東経136度と、北緯36度を原点とした ],Y座標で表わきれている.緯度経度を],Y座標に展開をするにあたって、 京都大学防災研究所助教授松村氏の作成したベッセル球面展開プログラムを使用 きせていただいた。
 P波の到着時刻を入力し終わると、すかさず、計算で求めた震源と、地震の起 こった時刻を表示する.震源の位置は、東経136度と、北緯38度を原点とし た],Y座標で表わされる。

3−3 震源決定


 さて、Fig.4の地震は、12月13日に起こっね地震であることは、前に も述べた通りである.この地蕉のヂータを使い震源決定をしてみた。
 北陸、福井、今庄の各観測点のデータは、京都大学防災研究所付属北陸微小地 表観測所から頂いてき。Vp=5.9km/sとして計算すると、Fig.5 の●のところに震央が決定した。深さは、5.06kmである。
 比較をするために、新聞の発表を調ペた.新聞は福井新聞である.資料1がそ のコピーである.
 これを見ると、東央の位置は北緯36度80分、東経136度20分となって いる。・・・おかしい.普通○○○度○○分といったときには○○分は60分ま でのはずなのに.そこで、この記事に福井気象台の調べと書いてあるので、福井 気象台に問い合わせてみると、震央の位置は、北緯35.8度、東経136.2 度だそうである.それを新聞が勝手に北緯35度80分、東経136度20分に してしまったらしい。このような公共機関がこのような教養のなさを露呈してい る訳である.新聞は余り過信しない方がよいと思わせる一件であった。

気を取り直して、比較を続けよう.

 福井気象台の他に、比較のため、北陸微小地震観測所が決めたルーチンの震源 情報も頂いた。
 Fig.6に北陸微小地震観測所で決めた震央は○印で、福井気象台が決めた
震央は*印で示してある。
 これを見ると、北陸撒小地定観測所と、我々の決定した震央の位置は1km程 度差がある。しかし、どちらとも地理的には、河野相付近である。しかし、福井 気象台のものは南条町、今庄町付近であり、我々のものとかなりずれている.観 測点の数と配置などから見て(福井県内の観測点として、北陸撒小地表観測所は 5地点で地表租判点としては高密度に設置されている.福井気象台の方は敦賀と 福井の2地点である.)、北陸撒小地薦札測所の方が精度が良いはずである。と いうことは、我々の得た震源はかなりの精度で決定できたといえる。
 まあ、今回1回だけでは、まだ精度が云々ということはいえないかもしれない. けれども、いいかげんなものではないということがわかった。

4 最後に


 研究(と言えるのだろうか?)をしていて、あっというまに1年が過ぎ去って しまった.まだそう大したことをししてもいないのに.という訳で、もう1年続け てやりたいと思う.このような報告書で良いならは、許可して頂きたい。
 最後に、色々教えてもらった指導教官の岡本教官、前渾技官、京都大学防災研 究洲予属北陸微小地表観測所の平野氏、リーマを貸して頂いた三好技官、手伝っ て頂いた事務の森氏、そして、時には難癖をつけられ、時には励ましてもらい、 時には手伝ってくれた、3Bの竹下君、林君、斉藤君、木下君、西川君、住本君、 3Mの原君、宮前君、3Cの中川君、2Bの牧野君、その他の人達に感謝して、
この報告書を締めくくる。

付録

Fig.1
Fig.2
Fig.3
Fig.4
Fig.5
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