Geophysical Research Group
FNCT

福井県内で実施している地電位差の連続観測

岡本拓夫* 渡辺邦彦**

Continual Observation of Self-potential at Fukui Prefecture

OKAMOTO Takuo and WATANABE Kunihiko

Synopsis

There are several large active-faults in and around the Fukui Prefecture. Hokuriku Observatory, DPRI, Kyoto-u, has recorded earthquake's wave-form since 1976. Taniguchi Observation Station (TIJ) and Sasatani Observation Station (SSJ) have observed the self-potential data since 1990 and 1998 respectively. These sites existed in the active-faults, Nukumi and Hosenji fault respectively. We recognized several signals related to the seismic activity. We estimated that those signals were caused by the variation of apparent-resistivity just under the observation site (crushed zone). The high-sampling (256Hz) observation started since 2003. We introduce the observation system in detail.

Key word: Seismicity, Seisimic gap, Mechanism, Self-potential, Resistivity

1.はじめに


 福井県及び周辺には,有力活断層の活断層の地表トレースの分布が多く認められ(新編日本の活断層, 1991),歴史的にも福井地震(M7.1, 1948)に代表される内陸型大地震の発生も知られている。近年,地震の発生予測において地球電磁気を用いた方法(例えばSEMS:上田誠也代表,1998)が研究されてきた。福井県は,電磁気観測でのノイズ源の一つであるJRが交流電源であるので, 観測に適していると考えられる。ただし,福井鉄道とえちてつが直流電源で運行している。このような状況で,京都大学防災研究所と福井工業高専地球物理学研究会は,京都大学防災研究所地震予知研究センタ−北陸観測所(HKJ),池田町谷口観測室(TIJ)と福井市笹谷観測室(SSJ)で,地電位差の連続観測を行ってきた。最新の報告では渡辺・岡本(2006,in press)が,HKJの地電位差観測について詳しく報告している。地震活動については,HKJが1976年より北陸地方の地震活動を把握し,その特特徴を報告している。特筆すべき点は, 福井地震断層に沿う福井地震(M7.1, 1948)の余震と思われる活動と,有力活断層に沿う微小地震の分布,及び近畿トライアングルを形成する断層に伴う地震活動である。これらの活動を詳細に見てみると, 例えば岡本他(2006,in press)が指摘するように,現在,嶺北地域の地震活動の低下が認められている。このような地震活動の特徴を踏まえ,断層破砕帯での増幅や地震発生予測の研究目的から,2003年よりHKJ,TIJとSSJにおいて256Hzの高速サンプリングによる地電位差の連続観測を開始した。TIJは,地震観測も同時に行い取り込んでいる。これらの環境下で, 2004年10月5日にM4.8(JMA)のイヴェントが発生した。Fig.1に発生した地震の位置と, 付近の地震活動の様子(岡本他, 2005)を示す。今回のイヴェント(M4.8, JMA)は,TIJの設置以来最も意味のある地震であることが期待される。現在も嶺北における地震発生数の減少傾向は認められ,詳細解析の必用な状況になっている。本稿は, 地震の発生に伴って認められた物理的現象の考察を行い,電磁気観測の紹介とそれらとの関係を明らかにすることを目的としている。

2.観測室


 HKJ,TIJ及びSSJについて簡単に紹介する(Fig.2)。HKJは,渡辺・岡本(2006,in press)でも詳しくふれられているが,観測所の坑内に電極が埋められ展開されている(Fig.3)。坑内は気温・湿度がほぼ一定で,観測に適した条件である。また,坑内には小規模であるが断層が走っており,関連した記録が期待できる。特に坑内では,地震観測,全磁力観測が行われており,デ−タの比較も可能である。TIJは,その地帯的特徴が岡本他(1990)でも詳細にふれられているが,最も重要なことは温見断層の西端に位置していることである。観測室付近では,濃尾地震(M8.0, 1991)のおり地震断層が確認された。地形的な特徴などにより,断層破砕帯の形成が推察される。fig.4に,電極の配置を示す。電極は,温見断層の走向に対して概ね平行及び直交するように配置されている。SSJは福井市の西方に位置し,宝泉寺断層に沿って設置されている。観測室の詳細は,岡本他(1998)に示されている。Fig.4に,電極の配置を示す。SSJもTIJと同じように,断層の走向とほぼ平行・直交するように配置されている。SSJについては,10秒サンプリングのデ−タが電話回線によりテレメ−トされている。TIJでは,PMK110(地震計)による速度波形が同時に取り込まれている。

3.現観測システム


 現観測システムについては、前澤(2003)で詳しくふれられているが,地球物理学関連のデ−タ収録の為にパソコンを利用して構築されたものである。システムの特徴,256Hz,8chの差動入力でHDの容量にも,長期収録が可能な点(60Gbで約半年)である。時刻の校正はGPS,JJY,Radioにより受信環境で対応することができ,GPSが使用できた場合が500nSec,JJYの場合が30mSecのエラ−になる。OSはWindows2000で,安定して稼働している。

4.前システムでの結果


 前システムの結果としては,代表的なものとして岡本他(1995),岡本他(2000)や岡本他(2001)が挙げられる。地電位差の観測システムはSES93で,10秒サンプリングでデ−タは電話回線でテレメ−トされていた(国際地震フロンティア)。岡本他(1995)では,兵庫県南部地震(1995,M7.3)に関連してTIJの記録を使って,1日間のパワ−スペクトルの日ごとの変化を調べた。結果,本震の発生前(1週間)に振幅が大きく変化していることを見出し,温見断層破砕帯の比抵抗の変化(応力変化)があった,すなわち,広域的な応力の擾乱の可能性を指摘することができた。  岡本他(2000)は,1997年12月19日に大聖寺沖で発生したM4.4(JMA)の地震について,その発生10日前より地電位差の全成分に変化が現れていることを確認した。
 岡本他(2001)は,京福電鉄(現えちてつ)が元旦の深夜に臨時電車を走らすことを利用し,電流源と電場ヴェクトルの解析を行った。Fig.5は,TIJ及びSSJで記録された,元旦に走る京福電鉄(現えちてつ)参拝用臨時電車の漏洩電流に関する, 電位差差分ベクトルの重ねあわせた結果である。TIJの特徴として, 卓越方向が断層の走向と一致することにより, 破砕帯の発達が大きいことが推察される。断層破砕帯を含む地域に電極を設置すると, 増幅なのど効果が期待される(例えば渡辺, 1998)。

5.現システムでの結果


 TIJでは,前章で述べたように地震と地電位差の連続観測を行っている。岡本他(2005)によれば,2004年10月5日の池田地震(M4.8,JMA)の発生時にも稼働しており,欠測することなく記録することができた。ADコンバータが16bitであるので, 各記録を高ダイナミックレンジで,収録している。地震計は検定をしていないので, 本稿では波形を相対値として示す。岡本他(2005)によれば,上下動には明瞭なP波の位相が認められるが,水平動はS波の位相のみ顕著である。このことは,波線がほぼ観測室の真下からきたことを意味し,震央が観測室に近いことが分かった。振幅より温見断層の断層破砕帯に大きな地震動が入力したものと推察できた。Fig.6に, 上下動と地電位差(B-D)の変化を同時に示す(岡本他,2005)。地電位差変化は,福井県内の電力供給の周波数を考慮して10Hzのハイカットフィルターをかけた結果である。横軸は,時間をそろえて示してある。明らかに,S波の位相に対応しているような地電位差変化が認められる。岡本他(2005)でも指摘しているように,S波に対応することから震源に起源する現象ではなく,電極直下の構造変化に対応するものであると推察できる。岡本他(1994)が指摘するように,破砕帯部分の幅が地震動(S波)で変化する,すなわち,低比抵抗部分のスケール変化に対応する電位の変化を見ているのかもしれない。

6.期待されること


 3観測室とも同じシステム(前澤,2003)で稼働しており,mSecのオ−ダ−の時間の精度でデ−タを比較できる。また,ADボ−ドも16bitで共通であるので,振幅比の議論も可能になる。これらの特性をいかして,電車漏洩電流を用いた断層破砕帯での増幅特性の研究を行うつもりである。福井県及び周辺は,特徴的な活動の様子(岡本他,2006 in press)が認められ,特に嶺北では地震発生数の減少が認められることにより,地震発生予測の面からの研究も期待される。

7.まとめ


 本研究の遂行にあたり, 震源データは京都大学防災研究所地震予知研究センター上宝観測所・北陸観測所のデータベースを使用しました。解析ソフトは, 建築研究所古川信雄博士, 防災科学技術研究所井元政二郎博士, 京都大学防災研究所伊藤潔教授・片尾浩助教授, 関東学院大学前田直樹教授にお世話になりました。本校地球物理学研究会の学生には, 全面の協力を頂きました。記して, 感謝致します。

8.参考文献


・活断層研究会,新編日本の活断層,東京大学出版会,1991.
・前澤廣道,GPS時計を内蔵するデータ収録システムの構築,東京大学総合技術研究会技術報告集,8-31〜33,2003. ・岡本拓夫,渡辺邦彦,前澤廣道,義江修二,福井県周辺での活断層探査と地震活動について(I),本稿研究紀要,第24号,pp.7-12,1990.
・岡本拓夫,前澤廣道,渡辺邦彦,平野憲雄,田中保士,福井県周辺における活断層探査と地震活動について(V),本稿研究紀要,第28号,pp.1-9,1994.
・岡本拓夫,前澤廣道,渡辺邦彦,田中保士,地球物理学研究会,兵庫県南部地震前後に見られた変化について,本稿研究紀要,第29号,pp.185-192,1995.
・岡本拓夫,前澤廣道,長尾年恭, 田中保士, 地球物理学研究会, 笹谷観測室(清水町)における地殻活動観測について, 本校研究紀要, 第32号,pp.85-91,1998.
・岡本拓夫, 前澤廣道, 長尾年恭, 田中保士, 渡辺邦彦, 1997年12月19日, 大聖寺沖に発生したM4,4(JMA)の地震に関連する現象について, 本校研究紀要, 第34号,pp.129-135,2000.
・岡本拓夫,前澤廣道,渡辺邦彦,長尾年恭,田中保士,京福越前線臨時電車による漏洩電流の研究,本校研究紀要,第35号,pp.95-100,2001.
・岡本拓夫,平野憲雄,竹内文朗,西上欽也,2004 年 10月5日に池田町付近で発生したM4.8(JMA)に関連して,京都大学防災研究所年俸,No.48,B,pp.217-221,2005.
・岡本拓夫,山本大祐,寺田一樹,渡辺邦彦,田中保士,池田町観測室において記録された2004年の池田の地震(M4.8,JMA),本校研究紀要,第39号, pp.101-106,2005.
・岡本拓夫,平野憲雄,竹内文朗,西上欽也,渡辺邦彦,福井県奥越地域における最近の地震活動について,京都大学防災研究所年報,in press,2006.
・渡辺邦彦(代表), 岡本拓夫, 前澤廣道, 漏洩電 流ベクトルを用いた地殻ブロック境界の特徴的 挙動の研究, 研究成果報告書, 科学研究補助金, 基盤研究(C)(2), 課題番号 07804027, 1998.
・渡辺邦彦,岡本拓夫,北陸観測所坑内における地 電位差観測(序報),京都大学防災研究所年報,in press,2006.










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