Geophysical Research Group
FNCT

池田町観測室において記録された2004年の池田の地震(M4.8,JMA)

岡本拓夫* 山本大祐 寺田一樹 渡辺邦彦** 田中保士***

Some Signals Recorded on the Occurrence of an Earthquake with M4.8 (JMA) at Ikeda Observation Station in 2004.

OKAMOTO Takuo, YAMAMOTO Daisuke, TERADA Kazuki, WATANABE Kunihiko and TANAKA Yasushi

Synopsis

We are investigating the seismicity in and around the Fukui prefecture. Hokuriku Observatory, DPRI, Kyoto-u, has recorded earthquake wave-form data since 1976. Taniguchi Observation Station has observed the self-potential and earthquake since 1990. An earthquake with M 4.8 (JMA) occurred at Ikeda town on 10/5 in 2004. In source region, we recognized the seismic gap from Dec. 2000. Earthquake fault, estimated from mechanism and aftershock distribution, was almost parallel to Nukumi fault system. The phase of self-potential variation coincident with the S wave arrival was recognized. In this paper, we discuss about these phenomena in detail.

Key word: Seismicity, Seisimic gap, Mechanism, Self-potential, Resistivity

1. はじめに

 福井県及び周辺では, 活断層の地表トレースの分布も多く認められ(新編日本の活断層, 1991), 歴史的にも福井地震(M7.1, 1948)に代表される内陸大地震の発生が知られている。京都大学防災研究所地震予知研究センター北陸観測所(以下, 北陸観測所)は, 1976年より北陸地方の地震活動を把握し, 特徴を指摘してきた。特筆すべき点は, 福井地震断層に沿う福井地震(M7.1, 1948)の余震と思われる活動と, 有力活断層に沿う微小地震の分布である。近畿トライアングルを形成する断層に伴う地震活動も, 顕著である。これらの活動を詳細に見てみると, 例えば岡本他(2002)が指摘するように, 領域の中に地震活動の低下したものが認められる。岡本他(1990)でも紹介されているが, このような地震活動の特徴をふまえ, 地震発生予測の研究目的から, 1990年より池田町谷口観測室(TIJ)で地電位差観測を開始した。このような環境下で, 2004年10月5日にM4.8(JMA)のイヴェントが発生した。Fig.1に発生した地震の位置と, 付近の地震活動の様子(岡本他, 2005)を示す。今回のイヴェント(M4.8, JMA)は, TIJの設置以来最も意味のある地震であることが期待される。本稿は, 地震の発生に伴って認められた物理的現象の考察を行い, 本地震の特徴を明らかにすることを目的としている。  

2. 池田観測室

 池田観測室(TIJ)について簡単に紹介する。TIJは, その地帯的特徴が岡本他(1990)でも詳細にふれられているが, 最も重要なことは温見断層の西端に位置していることである。観測室付近では, 濃尾地震(M8.0, 1991)のおり地震断層が確認された。地形的な特徴などにより, 断層破砕帯の形成が推察される。電極の分布などは, 例えば岡本他(2001)で詳細に示されている。現在までの研究結果の一例として, fig.2に岡本他(2001)の例を示す。TIJとSSJ(笹谷観測室)における元旦に走る参拝用臨時電車の漏洩電流に関する, 電位差差分ベクトルの重ねあわせた結果である。TIJの特徴として, 卓越方向が断層の走向と一致することにより, 破砕帯の発達が大きいことが推察される。断層破砕帯を含む地域に電極を設置すると, 増幅なのど効果が期待される(例えば渡辺, 1998)。現在行われている観測は, 地震と地電位差である。内容は, 速度型地震計(勝島製作所, PMK)のデータと地電位差のデータ計8チャンネルを, 256Hzのサンプリングで連続的にパソコンにより収録している(前澤, 2003)。

3. 池田の地震

2004年10月5日に池田町付近で, M4.8(JMA)の地震が発生した。Fig.3に, MJHD(Hurukawa and Imoto, 1992)で再決定した本震及び余震(後1ヶ月間)の震源とメカニズム(下半球等積投影)を示す(岡本他, 2005)。震源の深さは15kmより浅く, 本震が最深部から破壊を開始したことがわかる。余震の発生個数は、1ヶ月間で16個と少なく, この地域の特徴である。当地域付近は周りよりも地震の発生する深さが浅く(Hirano, 1998), 地殻の熱流量も高いことも指摘され, これらのことが余震の発生数に関連しているのかもしれないと推察できる。本震の発生した地域は, 福井地震断層に沿う福井地震の余震の活動と, 温見断層に沿う濃尾地震の余震と思われる活動 との境界付近に相当する。余震の並びとメカニズムより, 温見断層に平行な震源断層が推定される。地上の活断層のトレースを確認すると対応するものは見うけられず, この地域のより詳細な構造調査の必要性が伺える。また, 地震発生前に地震活動の空白域を形成していないか, 震央域に地震の発生が確認されるまで時間を遡って調べてみた(岡本他, 2005)。その結果, 2000年の12月より地震の発生が認められなくなったことが分かった。

4. 池田観測室での地震波形と地電位差変化

TIJでは, 前章で述べたように地震と地電位差の連続観測を行っている。当地震の発生時にも稼働しており, 欠測することなく記録することができた。ADコンバータが16bitであるので, 各記録を飽和させるこなくデジタル化し, 収録している。地震計の検定をしていないので, 本稿では波形を相対値として示す。Fig.4に, 速度型3成分の波形を示す。上下動には明瞭なP波の位相が認められるが, 水平動はS波の位相のみ顕著である。このことは, 波線がほぼ観測室の真下からきたことを意味し, 震央が観測室に近いことが分かる。また, 振幅より温見断層の断層破砕帯に大きな地震動が入力したものと推察できる。Fig.5に, 上下動と地電位差(B-D)の変化を同時に示す。地電位差変化は, 福井県内の電力供給の周波数を考慮して10Hzのハイカットフィルターをかけた結果である。横軸は, 時間をそろえて示してある。明らかに, S波の位相に対応しているような地電位差変化が認められる。この変化は, 収録している地電位差の全データに認められた。S波に対応することから震源に起源する現象ではなく, 電極直下の構造変化に対応するものであると推察できる。岡本他(1994)が指摘するように, 破砕帯部分の幅が地震動(S波)で変化する, すなわち, 低比抵抗部分のスケール変化に対応する電位の変化を見ている可能性がある。なお, 電極は接地抵抗減少剤を入れ埋められているので, 電極単独の揺れによるとは考え難い。

5. まとめ

 2004年10月5日の池田町付近の地震(M4.8)の発生時に, 関連する現象, 空白域の形成やTIJにおける地電位差変化を確認することができた。震央域でのサイスミシティギャップは, 2000年12月より認められた。また, S波の位相に対応する電位差変化が認められ、比抵抗構造の変化に伴う電位変化の発生の可能性を指摘できた。

6. 謝辞

 本研究の遂行にあたり, 震源データは京都大学防災研究所地震予知研究センター上宝観測所・北陸観測所のデータベースを使用しました。解析ソフトは, 建築研究所古川信雄博士, 防災科学技術研究所井元政二郎博士, 京都大学防災研究所伊藤潔教授・片尾浩助教授, 関東学院大学前田直樹教授にお世話になりました。本校地球物理学研究会の学生には, 全面の協力を頂きました。記して, 感謝致します。

7. 参考文献

・Norio Hirano, Upgrading the Seismic Observation and Analysis System for Advanced Application of the Database, Dr. Thesis,Kyoto-U, 1998.
・活断層研究会, 新編日本の活断層, 東京大学出版会, 1991.
・前澤廣道, GPS時計を内蔵するデータ収録シス テムの構築, 東京大学総合技術研究会技術報告集, 8-31〜33, 2003.
・岡本拓夫, 渡辺邦彦, 前澤廣道, 義江修二, 福井県周辺での活断層探査と地震活動について(T), 本校研究紀要, 第24号, pp.7-12, 1990.
・岡本拓夫, 前澤廣道, 渡辺邦彦, 平野憲雄, 田中保士, 福井県周辺における活断層探査と地震活動について(X), 本校研究紀要, 第28号,pp.1-9, 1994.
・岡本拓夫, 前澤廣道, 渡辺邦彦, 長尾年恭, 田中保士, 京福越前線臨時電車による漏洩電流の研究, 本校研究紀要, 第35号, pp.95-100, 2001.
・岡本拓夫, 和田博夫, 平野憲雄, 竹内文朗, 伊藤 潔, 渡辺邦彦, 西上欽也, 北陸地方西方沿岸及び その周辺域における最近の地震活動について, 京都大学防災研究所年報, 第45号, B,pp.595-600, 2002.
・岡本拓夫, 平野憲雄, 竹内文朗, 西上欽也, 2004 年10月5日に池田町付近で発生したM4.8(JMA)に関連して, 京都大学防災研究所年俸,2005, 印刷中.
・渡辺邦彦(代表), 岡本拓夫, 前澤廣道, 漏洩電流ベクトルを用いた地殻ブロック境界の特徴的挙動の研究, 研究成果報告書, 科学研究補助金,基盤研究(C)(2), 課題番号 07804027, 1998.
 



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