[Namazu]
Geophysical Research Group
FNCT

平成8年度福井工業高等専門学校教育後援会研究奨励金による研究完了報告書

福井県周辺における地震活動の研究

4年 電子情報工学科 藤田雅史
3年 環境都市工学科 大久保英徹
3年 環境都市工学科 金澤義治
4年 電子情報工学科 花山慎一

指導教官 岡本拓夫教官

1 はじめに

 各地で地震災害が多発している昨今、地震データ解析の必要性が増してきている。我々地球物理学研究会が設置している峰山観測点(京都府中郡峰山町)は、周辺に他の研究機関の観測所が無く、その観測データは非常に重要性の高いものである。そこで今年度は峰山観測点に着目し、そのデータの波形解析を試みた。また、波形解析のターゲットとなる地震データを現在のシステムよりも効率よくDISK-BASICからWindows環境へ変換する方法や、震源地のエリア判別プログラムなどを開発する技術の習得も目的としている。
 今回の研究における解析によって得られるデータから、将来有意義な発見があるのではないかと期待している。

2 使用データ

 波形データは、
 峰山観測点 北緯35.57゜ 東経135.05゜(京都府中郡峰山町)における1996年5月〜1997年5月の期間のデータを予定していたが、タイムコードが正しく読みとれないデータを含んでいたため、1996年2月〜1997年2月 の期間のものを使用した。

 また、地震選択のための震源情報は、
 「京都大学 防災研究所 地震予知研究センター SATURN システム」による震源ファイル 「SATDAT」(1997)
を使用した。

 以上2種類のデータから、実際に解析に用いたデータは以下の手法によって選択した。まず、震源情報であるSATDATの中から、峰山観測点を中心とした1゜四方のエリア内で発生した地震を抽出し、さらにマグニチュードが3.0以下という条件で絞り込んだ。これは、マグニチュードが3.0を越えると記録上の波形が飽和してしまうため、それらの地震を除外するために行った処理である。この一連の作業は、Visual Basicで開発したフィルタプログラムを利用して行った。このプログラムは、発生日時、震源の緯度・経度、震源の深さ、マグニチュードというフォーマットで記録されたASCII形式のSATDATを読み込み、連続的にif文を用いて振り分け、エリア内のデータのみを抽出しSATDATと同一のフォーマットで書き出すものである。
 この処理の結果、1996年2月〜1997年2月の一年間でSATDATに記録された地震総数9168個の中から、エリア内で835個の地震(M3.0以下)に絞り込めた。さらに大局的に見た方位特性が存在するかどうか知るために、4方位の中から代表的な地震を1個ずつ選択した。具体的には、先ほどの峰山観測点を中心とした1゜四方のエリアを16個に細分し、再び震源データを振り分けた。実際には、この処理はVisual Basicで開発したプログラムで震源地のエリアを判別し、レポート出力した。その出力結果と峰山観測点で記録された地震データと照らし合わせ、一致しているものを手作業でリストアップした。
 最後に選択した地震の波形データを取り出す作業を行った。波形データは音響用のカセットテープに保存されており、それを再生するソフトはN88-BASIC(Disk Basic)上で動作するものである。再生された波形データはハードディスクに保存されるのだが、任意の波形解析を行うにはこれをMS-DOS形式にコンバートする必要がある。
コンバートの手順を以下に示す。

  1. 再生プログラムにより、選択した地震を探し出してハードディスクに保存する。
  2. ハードディスクに保存された地震波形データをフロッピーに落とす。
  3. コンバートプログラムを使用してN88-BASIC形式からMS-DOS形式にコンバートする。
 (2)を行うために、N88-BASIC作られたスペクトルをとるプログラムをフロッピーに保存するだけのプログラムに改造した。N88-BASICからMS-DOSへのコンバートプログラムは市販のものを使用した。

 以上のプロセスを経て、選択された4つの地震データを以下に示す。

EQNo. 方位 年月日 時刻 緯度 経度 震源深さ
1 1996.12.21 04:13:00.3 N35.851° E135.214° 5.0km 2.4
2 1996.05.22 01:22:43.9 N35.560° E135.028° 5.1km 2.3
3 1996.06.30 07:22:55.3 N35.488° E135.539° 8.2km 1.3
4 西 1996.04.23 16:44:49.7 N35.724° E134.958° 5.0km 1.3

3 グラフ・図の解説

 使用したソフトウェアの関係で、地震の発生直前から4096個までのデータを解析した。また、データのサンプリングが256Hzなので、解析長は16秒となっている。fig.1〜fig.10に卓越周波数を得るためにFFTをかけた結果をノーマライズしたものを示す。また、fig.11〜fig.20は、データ解析(後述)によって得られたものである。なお、fig.11〜fig.20におけるCh.2は上下動の速度、Ch.3は水平動のNS方向の速度、Ch.4が水平動のEW方向の速度を示している。Fig.21は、地震選択に用いたSATDATのデータを地図上にプロットしたものを示す。このうち、上図は期間中に発生した全地震で、下図は、使用データで述べたようにフィルタをかけ抽出されたデータである。

Figs
EQNo.ChNo: 1.2 1.4 2.2 2.4 3.2 3.3 3.4 4.2 4.3 4.4
FFT: 001 002 003 004 005 006 007 008 009 010
Filter: 011 012 013 014 015 016 017 018 019 020

4 データ解析

 今年度は従来のような発生した地震の数の積算は行わずに、個々の地震の波形データに着目した。実際にはすべての地震について解析を行うことは非情に困難であるため、いくつかの地震のデータを抽出し、それらの波形データについて解析を行った。
 解析には新たにプログラムを開発せずに、市販のアプリケーションソフト(数値関数付きのグラフ作成ソフト,MS-Windows用)を使用した。
 具体的な解析手順は以下のようである。
  1. まず、今回使用したソフトは4096個までの数値データしか扱えないため、地震の波形の必要なところ以外をカットして4096個に納めた。ちなみに、観測機器が1/256秒サンプリングなため、4096個では16秒間のデータとなる。
  2. 次に,それぞれの波形の全体についてFFT(Fast Fourier Transform)をかけて Spectrumをとり、両対数グラフにプロットした。
  3. また、バンドパスフィルタで1〜5Hz,5〜10Hz,10〜15Hz,15〜20Hzの周波数成分を抽出し、それぞれについてどのような違いがあるのか比較を行った。
  4. (2)で得られた結果をもとに、(3)を比較し、なにか現象が見られないか、考察を行った。
 特に今年は、波形解析は初めてであり、初歩的な解析手順を学習することが主な目的であるので、特異な現象について原因を追求するということには重点を置かなかった。

5 考察

 選び出した波形について、各地震ごとにその特徴について触れる。
 ここでは特にEQNo.2についてその特徴を言及する。S−Pタイムについて着目すると、EQNo.2のみ、他に比べて比較的震源距離が短いことがわかる。ところが、5〜10Hzの波形について着目すると、 No.2の地震のみ振幅が大きい。地震の伝播理論からいえば、震源距離に比例して高周波成分が減衰するはずであるにもかかわらず、 No.2の地震は、近地にもかかわらず低周波側が卓越している。このことは、 No.2の地震について、伝播経路中の異常、もしくは震源過程の特異性が考えられるが、時間の都合上、今回の報告書では議論できなかった。

6 今後の課題

 今回は地震データを4方位に振り分けるのに、震源地データを緯度・経度から16ブロックに分けてから判別するという手法を採ったため、複雑なプロセスを経なければなかった。そこで、次年度は震源地データを直接4方位に振り分けるプログラムを作成し、効率的にデータを処理する方法を検討してみたいと思う。また、波形データを DISK-BASIC から Windows へのコンバートを行うには非常に時間を要するため、大量のデータを処理できないのが現状であるため、もっと効率よく変換できるシステムの開発を早急に行わなければならない。
 また、峰山観測点の最終的に残るデータは印刷してファイリングしてあるかノートに地震の記録を残しておくだけなので、計算機上でこのデータは使えない。よって、「SATDAT」と照らし合わせるのが手作業だったため大変であった。これからは観測点のデータを計算機上で使えるデータとして残し、照合プログラムなどを充実させ、処理効率をよくしていきたいと思っている。

7 謝辞

 今回の研究にあたり、震源地のエリア判別のために京都大学防災研究所のデータを使用させていただきました。非常に有用なデータを使用することができ、感謝しております。加えて、ご指導くださった本校一般物理の岡本教官、前澤廣道技官に深く感謝いたします。また、報告種をまとめるにあたって、助言等を頂いた本校地球物理学研究会のみなさまに、深くお礼申し上げます。

8 参考文献

  1. 「SAT地震データ」,京都大学防災研究所地震予知研究センター,1997,岡本,私信
  2. 「活図」マニュアル,エバ・グリーン
  3. 「N88-DISK-BASIC」マニュアル,NEC
  4. 「F-BASIC V4.0」マニュアル,富士通
  5. 「Visual Basic 4.0」マニュアル,Microsoft
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