[Namazu]
Geophysical Research Group
FNCT

平成6年度福井工業高等専門学校教育後援会研究奨励金による完了報告書

若狭湾周辺における地震活動の研究

電子情報工学科 2年 花山慎一
電子情報工学科 4年 大蔵峰樹
電子情報工学科 2年 西部知恵
工業化学科 3年 藤澤峰子

1 はじめに

 我々、地球物理学研究会では、独自に観測点をおいて地震の観測を行っているが、 今年度新たに峰山観測点(京都府中郡峰山町,昨年6月に開始)が設置された。新 しい観測体制に移行してからの地震活動における最大の出来事は、兵庫県南部地震 (1995年,M7.2)である。阪神・淡路地区に多大な被害をもたらしたこの 地震についての発生前後における地震活動の変化は、広域応力場を考える場合、注 目すべき点が非常に多いと考えられる。
 今年度は、この峰山観測点で観測された地震活動の推移に注目して、地震のデー タを集計・積算した。その結果、兵庫県南部地震前後の地震活動に、非常に興味深 い変化を見いだすことができた。
 昨年度の研究で、顕著な地震活動と静穏期間との関係が指摘されているが、それ をふまえて今年度は、峰山観測点のデータを用い、兵庫県南部地震前後の峰山観測 点周辺の地震活動の変化について考察していく。

2 使用データ

 今回使用したデータは、峰山観測点における、1994年6月19日から199 5年4月27日までのものである(読みとられた地震の総数705個)。データは 地震と見られたものすべてを使用した。(原則として、日付をすべて読みとれたも のを使用した)
 また、1995年1月17日,19時56分のデータから、同年1月22日,1 3時44分のデータまでは、先の兵庫県南部地震による多数の余震のため、収録用 テープの廻き取りをおこし、欠測となっている。
 なお、S−Ptimeの小数点以下は四捨五入してある。

3 データ解析

 データを解析するにあたって、読みとられた地震の記録を一日ごとに取り出し、 集計・積算するプログラムを作成,使用した。使用言語はC++である。ただ、集 計・積算するだけでは、震源までの距離による地震活動の変化が読みとれないので、 S−Ptime別に取り出し、集計・積算できるようにし、峰山観測点からの距離別に 地震活動を調べた。

4 グラフ・図の解説

 峰山観測点におけるS−Ptime別に見た積算グラフをfig.1-1に示す。このグラフ は、S−Ptimeを1〜5秒,1〜10秒,1〜15秒,1〜20秒,・・・という ように分けて書かれている。fig.1-2は最大値を250個としたものである。それに 対しfig.2-1の積算グラフは、S−Ptimeを1〜5秒,6〜10秒,11〜15秒, 16〜20秒・・・というように区切ってかかれている。fig.2-2は最大値を150 個としたときのものである。S−Ptimeが0秒のものは、今回はどちらのグラフに ついても用いていない。ここで言う、S−Ptime0秒とは、震源が遠すぎてS−P timeが読みとれないものや、地震が複数かさなって読みとれないものがほとんどで ある。
 またfig.2の範囲を示した地図がfig.3である。どれがどの範囲を示しているかは、 図の説明と対応していただきたい。ここでは、大森定数を8として、縮尺を考慮し、 この地図においては、S−Ptime5秒あたり1.71cmでかかれている。(40km に相当)

5 考察

 まずfig.1に注目すると、1994年11月9日あたりまでは、ほぼ定常的(直線 的)な地震活動のデータが得られているが、その日より地震活動が活性化してきて いる(グラフ中の1)。この日付近の地震活動(福井県外)をtable.1に示す。つま り、1994年11月9日をきっかけとして、地震活動が活発化していき、199 5年1月17日に、兵庫県南部地震で、一気にグラフが跳ね上がっているのが、明 らかに読み取れる。この日だけでも247個もの余震が読み取れた。実際は、この 日の途中から欠測しているので、少なくとも、この数倍は余震が観測できたろうと 思われる(グラフ中の2)。その後は徐々に地震の発生回数が減っていき、落ち着 きをとりもどしつつある。ところが、S−Ptimeが5秒以内の積算グラフについて は、他のものとは傾向が違う(グラフ中の3)。これについてfig.2でさらに言及す る。
 1994年11月9日前後についてfig.2で説明する。先述の地震活動の活発化の きっかけである、1994年11月9日のところ(グラフ中の1)を見るとS−P time6〜10秒のグラフだけが急激に上昇している。ここで、大森定数を8とする と、だいたい峰山観測点を中心に48km〜80kmの範囲で、地震活動の活発化がう かがえる。(猪名川町付近群発地震が発生している)
 ところでfig.2について、S−Ptime1〜5秒の近地地震に注目すると、興味深い 変化がいくつか見られた。S−Ptime10〜15秒のグラフの大きく上昇している ところが、兵庫県南部地震の発生を示すのだが、その後のS−Ptime1〜5秒の地 震活動の変化を見ると、多少増えはしているが、その後は、ほぼ静穏化してしまっ ている(グラフ中の4)。一方、もう少し遠いS−Ptime6〜10秒で起こった地 震の数を見ると、著しく上昇している。この現象は顕著な地震活動の前に存在する 静穏期間なのだろうか。気象庁のデータによれば、この付近で空白域が見いだされ ている。(石川他、私信)
 また、地震発生前の変化にも興味深い変化が見られる。1994年12月11日 及び1995年1月15日辺りでS−Ptime1〜5秒の地震の数が急に増えている のがグラフから読みとれる(グラフ中の2)。この変化は、兵庫県南部地震と関連 しているのかもしれないが、この日付近の主な地震活動で目立ったものはあまり記 録されていなかったので、現在のところはっきり分からない。
 そして、今回起こった兵庫県南部地震の震源が含まれる範囲である、S−Ptime が11〜15秒のグラフに注目する。大森定数を8として計算すると、この範囲は 88km〜120kmとなり、神戸市を十分含んでいる。(fig.3参照)まず、地震直後 に多数の余震でグラフが跳ね上がってるのが分かる。ところが、地震の一ヶ月前を 見ると、S−Ptime11〜15秒の地点において地震があまり起こっていない(グ ラフ中の3)。「顕著な地震活動の前には静穏期間が存在する」ということが、昨 年度の研究で指摘されたわけだが、この現象がそうだとすると、兵庫県南部地震の 前にも静穏期間が存在したということが指摘できると思う。

月日 場所
11月8日 23:48 4.3 74km 奈良県中部
11月9日 20:26 4.0 14km 大阪,兵庫県境
11月22日 03:57 3.0 15km 猪名川
11月22日 05:43 3.4 8km 猪名川
11月26日 09:50 3.1 10km 猪名川
table.1 1995年11月9日付近における主な地震活動(県外)

6 感想

 私にとってはじめての奨励研究ということもあってか、研究にかなりたどたどし いところが見られた。最初はわからないことだらけで、研究の主旨さえはっきり理 解できていなかったが、先生方や先輩方の指導により、なんとか報告書をまとめる ことができた。
 研究の大部分は、地震の再生が主だった。記録された波形が、地震によるものか それともただのノイズなのかを判断するには多少の経験が必要であり、初期の頃は どれがなになのか見分けるのに四苦八苦してしまった。
 また、地震データの整理のためのプログラムをC++で組んだことに関して、多 少なりプログラミングの勉強にもなったと思う。プログラムは地震の数をかぞえて、 一日ごとの地震の数を日付つきでファイルに出力するだけのものだが、日付をカウ ントする際に必要になった「日付<->秒」変換ライブラリを作成するのに、かなり時 間をとられてしまった。
 今年は特に、地震活動が活発であったので、研究結果も興味深いものが多かった。 今後も、引き続きデータの集計を続け、地震活動の変化について研究していくつも りだ。

7 謝辞

 本研究を進行するにあたり、ご指導くださった本校一般物理の岡本拓夫教官、前 澤廣道技官に深く感謝いたします。また、地震の再生を手伝っていただいた本校3 年工業化学科の佐々木健作君や、本報告書を書くに当たって、手伝っていただいた 本校2年工業化学科の谷口尚久君、同2年電子情報工学科の細井めぐみさん、助言 等をいただいた本校地球物理学研究会の学生のみなさま。以上の方々に深くお礼申 し上げます。

8 参考文献

  1. 大蔵峰樹,徳島大己,森本浩章「若狭湾における地震活動の研究」福井工業高
    等専門学校教育後援会研究奨励金完了報告書(1993)
  2. 大蔵峰樹,武澤永純,佐々木健作「若狭湾周辺における地震活動の研究」福井
    工業高等専門学校教育後援会研究奨励金完了報告書(1994)
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