Geophysical Research Group
FNCT

平成4年度福井工業高等専門学校教育後援会研究奨励金による研究完了報告書

プロトン磁力計による全磁力の観測
指導教官 岡本 拓夫 教官

2年電子情報工学科 浜口 洋平
2年電気工学科 徳島 大己



1.はじめに

 今日、地震予知の研究は盛んに行われている。その方法は地震学、地球化学、地球電磁気学の各分野での観測及び解析を基としたものである。私達は、そのうちの一つの研究をこの一年間行ってきた。それが「プロトン磁力計による全磁力の観測」である。
 この研究は去年、先輩たちが行った研究を引き続き行ったものである。去年の研究は、ほとんど成果を上げることが出来なかったようだったが、今年は去年の失敗を繰り返さないよう努力した。我々の研究としては、ようやく全磁力観測を始めることが出来たばかりなのだが、一年の成果を、見て頂きたい。

2. プロトン磁力計についての説明

 2.1プロトン磁力計の原理の説明

 プロトン磁力計は、プロトンの(地球磁場による)自由歳差運動の旋回周波数を測り、それによって、地球磁場の強さを測定する測定する装置である。プロトン(陽子)は水素原子の原子核と同じ素粒子である。プロトン磁力計におけるその振舞は、プロトンを回転する微少な棒磁石と考えることで理解できる。したがって、プロトンは磁化された針とジャイロスコープの2つの性質を兼ね備えている。プロトンは地震としての性質から、磁力線にそって向こうとする。しかし、ジャイロスコープとしての性質がしばらくはそれを妨げ、徐々にその方向に向こうとする。その間プロトンは旋回する。この旋回は、コマの旋回と同じようなイメージであり、磁場の強さによって速度(旋回周波数)が正確に比例することが知られている。この旋回周波数を測ることにより地球磁場を測定することができる。(詳しくは参考文献を御覧下さい。)

 2.2装置の説明

 プロトン磁力計は、センサー、センサーケーブル、電源装置、磁力計本体、コンピューター(データ収録装置)、によって成り立っている。(図1参照)
 センサーは、ソレノイドコイルで、コイル内部には600ccのポリ容器に入った試料液が置かれている。試料液として、蒸留水を使っている。またセンサーには方向性があり、水平にして東西に向けて設置する。センサーケーブルは、2芯のシールド線を使用している。磁力計本体は、株式会社ソフトビル社製KM622を用いた。コンピュータ(データ収集用)は、エプソン社製のラップトップコンピュータPC−286Lを使用した。ただし、データ通信のための背面スロットに磁力計本体とつながった専用ボードを差し込んである。

3.観測準備

 よいデータがなかなか得られないために一度センサー部分の中を調べてみた。そうしたところ、センサーの中のコイルが腐蝕し、コイル線が断絶していたのでこれをつなげた。また、磁力計部分のトランジスタがはずれていた。計内のどの部品に取り付けてあったのか分からなかったので、京都大学防災研究所の大志万直人助教授に指導を仰ぎ、その指導に従って、トランジスタを取り付けた。
 物理教室で室内観測を行った結果、調子よく動いた。しかし、南条に持っていきセンサーを野外に置き観測を行ったところ、データの値がバラバラで正常に作動してくれなかった。何度か調べた結果、やっと原因が分かった。その原因は接続ケーブルにあった、ケーブルは2芯シールドケーブルで、ケーブルの芯を2本とも使っていたため互いに影響しあい、信号が減衰していた。そこで芯を一本しか使わず、もう一本をグランドにつないで行った。しかし、それでも思うように動いてくれず、検討した結果コードが長過ぎたのが分かり、必要最低限の長さにしてようやく動いた。
 このようなことをしてようやくテスト観測が行われた。

4.観測場所

 観測日時−‘93年5月1日 15:00 〜 5月21日 20:00まで

 観測場所−福井県南条郡南条町上牧谷 東経136度13分26秒 北緯35度49分49秒

5.試験観測の結果

 5.1磁気嵐について

 通常、地球磁場は電離層などと同様、日変化その他の周期変化を行うが、時によりこの変化に異常をきたすことがある。これが磁気じょう乱といい、特に激しいものを磁気嵐という。磁気嵐は、太陽活動及び極光と密接な関係にあり、太陽から放出される荷電粒子によるものと考えられている。

 5.2日変化 長期変化

 2週間ほどのデータしか採れなかったため正確に長期変化と分かるものはなかったが、5月10日と5月20日とのデータを見比べると(10日・図2図3参照、20日・図4参照)20日の全磁力が全般的に大きい。これはこれからのデータを見なければ分からないが、長期変化の一部を示す可能性もあるのでここに挙げておく。日変化では、7,8時頃から磁力が急に下がり、そして16時頃からもとの値に戻ることがほとんどの場合に認められる。しかし、5月10日この時間帯、6時頃〜21時頃まで磁気嵐と思われるデータがある。それに、磁力が下がり始める時間からノイズも出始めていることもありノイズである可能性もある。

 5.3全体の変化(ノイズの原因)

 全体のグラフを見るとノイズが多いのが分かる。特に8時〜22時までの値が荒れる。ノイズの原因は、はっきりしないが8時〜22時という時間帯を見ると、観測点近くにある北陸自動車道の南条サービスエリアが原因の一つだと思われる。また、電磁波によってもノイズが出る。これはコイルの部分をアルミホイルで包めば少なくなると考えられる。まだこの他に原因はあると思うがわからない。これは、来年の課題にしたい。また磁力計の性能によってもノイズの量が違い、今の磁力計の性能を上げるため、ソレノイドコイルを二つつなげたものを来年試作したい。

 5.4地電位との関係

 5月10日に発生した磁気嵐の影響が地電位のデータにも現れている。全磁力のグラフと、その日の地電位のグラフとを見比べると(図2図3参照)全磁力が上がっているときは、地電位が上がっているのがわかる。これは、地電位観測においての磁気嵐などの磁気によるノイズ判別に役立つ。

  図2 5月10日 0:00〜12:00  図3 12:00〜24:00まで

6.終わりに

 この一年間、長いようで短かった。初めて研究というものを本格的に行ったわけだが日が進むばかりで研究はほとんど進まなかった。全磁力のデータは、地電位のサポートをするわけだが、それだけではこのプロトンの研究は、終わらせない。全磁力の変化による様々な現象は、非常に興味深い。例えば北極や、南極で見られるオーロラは、巨大な磁気嵐によって見られるものだし、ラジオのノイズも、磁場の影響を受けいている。我々は、これからも磁気について調べていこうと思い、おもしろい事実があればそれについても、調べていきたい。
 最後にいろいろな助言を下さった岡本教官、何度も観測点に連れて行ってくださった前澤技官、また、京都大学防災研究所の大志万直人助教授、本当にありがとうございました。

7.参考文献

 物理学と考古学 エケイトン著 みすず書房

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