Geophysical Research Group
FNCT

平成12年度福井工業高等専門学校教育後援会研究奨励金による研究完了報告書

福井県周辺における地殻活動の研究
指導教官 岡本 拓夫 教官

5年物質工学科 伊藤 善弘
5年物質工学科 加藤 真人
5年物質工学科 橋谷 一志
4年電子情報工学科 坂田 兼続
2年物質工学科 前田 望
2年環境都市工学科 笹島 康宏
1年環境システム工学専攻科 小林 知晃
1. はじめに
地球物理学研究会では地震予知が可能かどうか研究するため基礎データとして詳細な地震活動を把握する必要性から、福井県及びその周辺に地震観測システムを設置し、地震波形データをOM型イベントレコーダ(尾池 他)(OMレコーダ)を使い、カセットテープに保存している。また、福井県清水町笹谷(SSJ)、池田町谷口(TIJ)において、地電位差の観測を行っている。
今年度はSSJのデータの質を向上するため正確なセンサーの位置の測量を行った(地電位差の部門で報告する)。同時に、地球物理学研究会の活動をより多くの人に知ってもらうために、インターネットを利用したホームページでのPR活動について取り組んだので、報告する。



2,地電位差に関しての研究


2−1 はじめに

地球物理学研究会では、福井県丹生郡清水町笹谷観測点(以下SSJ)と、今立郡今立町谷口観測点(以下TIJ)において、地球電磁気現象と地震との関連性を調べるため、地電位差及び全磁力の観測を行っている。

 2−2 地電位差変化と地震との関連性
地電位差変化と地震との関連性を示唆する理由は、
@ 地震前後の応力の変化により地下水の流量、水位、圧力等が変化し、その結果観測点直下の電気抵抗が変化する。
A 岩石が砕ける時電波が発生することが知られており、電波が発生する理由は、岩石が砕ける直前に岩石中の鉱物が分極し、砕ける瞬間に大電流が瞬間的に発生するからである。この事から、岩石に多大な応力がかかる地震の発生過程では、地中で岩石の破壊がおきそれにより電流が発生する。
ことが考えられるからである。 @は抵抗の変化、Aは電流の変化・発生を示している。オームの法則を考えれば、地震による地殻の電気的な変化、すなわち抵抗や電流の変化はいずれも地電位差の変化に影響を及ぼすといえる。よって我々は地面に電極を埋設して、地電位差を観測しているのである。
ただし、地電位差の変化には様々な影響によるノイズが含まれている。特に影響の大きいものとして、太陽のフレアー等に起因した磁気嵐による磁場変化が挙げられる。この磁場変化の様子は、観測点に設置されているプロトン磁力計を用いた全磁力観測によりある程度把握出来る。この他にも、雨や雪は地面の接地抵抗に影響すると考えられるし、電車の運行により発生する電流は地下を流れる電流に影響すると考えられる。 よって、地震の影響のみによる地電位差の変化を取り出すには、地電位差の変化データと、全磁力観測による磁気嵐のデータ、気象状況、電車の運行状況等を比較する必要がある。


 2−3 本年度の活動方針

さて、これまでの観測データから、地電位差の変化と地震との間には何らかの関連性がある可能性が高いということがわかった(1997・1998年度奨励研究報告書)。 しかし、関連性がありそうなことはわかったものの、その関連性をより詳しく解析し、地電位差の変化と地震との関係を定量化するまでには至らなかった。これを行うには、
A 電極間の地電位差データから得られる電位差ベクトルを解析し、それにより観測点全体の電場の様子を把握して、地電位差と地震との関連性を詳しく解析する ことが必要であると考えられる。
@には電極間の距離、Aには電極の座標データが必要である。
 よって本年度はSSJにおいて光波測量を行い電極間の距離と座標のデータを求めた。

2−4 笹谷光波測量

実施日 :平成12年7月27・28日
     実施場所 :SSJ
測量実施者:環境都市工学科 2年(実施日現在)菊雅美・竹内麻衣子・安田亜裕美 1年(実施日現在)笹島康宏
使用器具 :光波測距儀  1台  プリズム反射鏡  1台   トランシット 1台       ポール    2本  5mポール    1本   三脚     3台       ポール用三脚 2台  トランシーバー  5台  箱尺     1本 5mポール用三脚 1台
測量方法 :T 測点7から見通せる測点

閉合差を求めて精度を高めるために 測点・測点7・基準点 の間で三角測量を行い 基準線から測点間の角度、基準点から測点までの距離と高低差 を求める。
      三角測量とは、『測量地域に三角形からなる三角網を構成し、三角形の内角と三角網中の1辺(基線)を測定する。これらの測定値を用いて三角形各辺の辺長を計算し、測点の位置を決定する。(ザ・測量士補)』測量である。


U 測点7から見通せない測点

      基準点と測点の2点間で 基準線から測点間の角度、基準点から測点までの距離と高低差 を光波測距儀で測定する。
     測量手順 :測量方法T・Uともに基準線から測点間の角度、基準点から測点までの距離と高低差 は以下の手順で測定する。
@ 道路上に基準点A〜Dを決定し、ピンを打ちチョークで印を付ける。
A 各基準点から測点の見通しがきくように枝や草を刈る。
B 基準線の片側の点に光波測距儀、もう一方の点にトランシット、測点に反射鏡を据え付ける。
C 光波測距儀で基準線から測点間の角度、基準点から測点までの距離と高低差を2回測定する。2回という回数は、気温、気圧、湿度等の気象変化による光波の速度変化による誤差や、器械固有の誤差、測定精度等々を考慮した結果考えられる回数である。
      なお高低差は 測定値の高低差+反射鏡の器械高−光波測距儀の器械高 によって求める。
結果   :表1参照
(この結果は光波測量で得た結果で、非常に信頼性の高いデータである。) このデータを元に、測点、基準点の位置関係を図化し、清水町役場発行の地図にプロットしたものが図1である。図2は電極間の距離を示した図である。 これにより、SSJにおける電極の位置関係を正確に示した地図ができたことになる。

測量結果はこちら♪  

2−5 電極の相対座標測定

次に電極の座標データを得るため、上記の地図から地理情報を廃したもの、つまり方位と電極の位置、宝泉寺断層の位置(推定)、縮尺のみが与えられた図を用意した。そして下記の手順で電極の相対座標を求めた。
@ 図中の方位記号の南北線に平行な線と東西線に平行な線を測点1に通した。つまり、測点1を原点とし東西方向、南北方向に座標軸をとる。
A 東西方向(X軸)と測線とのなす角を分度器で測定し、光波測量で得られた測線長のデータと三角関数を用い、各測点の座標を求めた。
次に、求めた座標の精度を論じる。まず、この図の座標軸は、清水町役場発行の地図をスキャナで読み取り出力した地図の方位記号を用いて書いた。清水町役場発行の地図は精度の高いものであるが、これをスキャナで読み取る際やプリンタで出力する際に方位記号の方向が1°程度ずれると考えられる。よって方位記号の北方向と真北方向とのずれは1°以内の精度だと考えられる。また角度を測るのに用いた全円分度器の目盛りは最小1°であった。よって目分量では0.5°まで計測できそうである。しかし鉛筆の芯0.5mmを考えれば図上では1°刻みの計測が限界であると考えられる。よって分度器を用いた角度の計測では、最大1°の誤差があると考えられる。従って図上における角度は、方位と計測上の誤差を含め、最大で1°程度の誤差を含んでいると考えられる。
測線の中では、測線 D−7 が最長で、図上12.5cm、実際の距離に直すと119.995mである。よって、
式 α°=ρ°×L/R   α°:角度の誤差

                       ρ°=180°/π
                       R:方向線長
                       L:誤差
∴L=R×α°×π/180°

R=119.995m α=1 π=3.14 を代入して L≒2.1m
 よって座標の誤差は最大2.1m見込まれると考えられる。(この誤差は、上記の手順で座標を求めた際に生じる誤差であって、光波測量の段階でこのような誤差が生じたわけではない。)
各座標値を先の方法のように求める場合、cm単位まで数値が求まる。しかし上で求めた最大の誤差2.1mを考えれば求める数値はm単位までの信頼性があると考えられる。その結果、座標データは表2の通りになる。

 2−6 来年度の展望

以上の方法により電極間の距離のデータ、電極の相対座標を取得できた。このデータを用い、来年度は他の観測点との比較や電場ベクトルの解析等を行い、地電位差の変化と地震との関係を詳しく解析していく予定である。
なお地電位差データの解析には、数値図形プロセッサ「活図」を使用する。「活図」は地電位差変化を単位長あたり(mv/100m)に変換したグラフが書け、地電位差データの解析において非常に有用である。現在メンバーが技術を習得しつつあり、来年度には本格的に地電位差変化の解析ができると思われる。本年度の結果は図3、4に示す。なお、図内のチャンネルと電極との対応は図2に示してある。
このように本年度は、来年度に予定している本格的な地電位差変化解析に向けた準備期間であった。来年度は地電位差変化解析を行うことが目標であり課題である。
3:PR活動

 地球物理学研究会ではPR活動の一環として、情報公開の簡便さから、インターネットにホームページを公開している。  今年度は初心者にもわかりやすい、簡単な地震学のページを設けた。このページは、福井県出身の大森房吉を紹介し、大森房吉の考案した「大森公式」と「余震の大森公式」をテーマにした「わかりやすい地震学の説明」である。
 アドレスはhttp://namaz.ge.fukui-nct.ac.jp/ である。

4:地震活動に関して

 今年度は観測の継続、波形の再生を行った。

5:感想

 今回の研究においては、各メンバーが精力的に笹谷観測点での測量、地電位差のデータの整理に取り組めて、各メンバーの勉学に役に立ったと思う。  また次年度の奨励研究において、更なるデータ収集、本格的な地電位差変化解析をおこない、メンバーの学習に役立てたいと考える。

6:謝辞

本研究において、本校一般科目物理担当 岡本拓夫助教授、並びに 前澤廣道 技官には、いろいろなご指導を頂き、深く感謝いたします。ありがとうございました。 笹谷光波測量にあたっては、二年環境都市工学科の菊雅美さん、竹内麻衣子さん、安田亜裕美さん(当時)にご協力を頂きました。ありがとうございました。 8月上旬の京都大学防災研究所地震予知研究センター見学のおりには研究所の方々に大変お世話になりました。ありがとうございました。

7:参考文献

小林知晃著 平成10年度奨励研究報告書『福井県周辺における地殻活動の研究・地球電磁気部門』(1999年)
     '98年度奨励研究報告書『地電位差観測』'(1998年)
菊雅美著  笹谷測量レポート(2000年)
國澤正和 浅野繁喜 福山和夫共著 ザ・測量士補(2000年)
  
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