Geophysical Research Group
FNCT

平成10年度福井工業高等専門学校教育後援会研究奨励金による研究完了報告書

福井県周辺における地殻活動の研究
指導教官 岡本 拓夫 教官

5年環境都市工学科 金澤 義治
5年環境都市工学科 大久保 英徹
4年環境都市工学科 小林 知晃
3年機械工学科 藤田 平
3年物質工学科 伊藤 善弘
3年物質工学科 橋谷 一志
3年物質工学科 加藤 真人
2年電子情報工学科 坂田 兼続



1.はじめに

我々は、福井県及びその周辺で発生する地震を監視し、解析することを目的にOM型イベントレコーダー(尾池他、1985)を福井県内及びその周辺(白山 他)に設置し、波形データを音響用カセットテープに記録・保存している。その1カセット数百に及ぶデータの再生、記録紙上保存を行うと共に地震波形について学んできた。しかし紙を使ったデータ保存は取り扱いが厄介で、最新性能のコンピューターでの処理・データ管理が我々の目標であった。  その問題を解決すべく昨年度は、ステレオ2トラック方式のカセットテープのアナログ地震波形データ(第1トラックにタイムコード、第2トラックに地震波形3成分を保存)をOM再生システム(平野憲雄、平野他、1988)によってA/D変換し、得られたデータと、Windows上でそれらと同じ波形をパソコンに内臓されているサウンドボード(A/D converter付きPCM音源)にLINE入力を介して、再生したものとを比較したが、サウンドボードによる再生は人間の耳の特性に合わせるフィルターがかかっているとの結論を得た(金澤他、1988)。これでは再現性の問題から地震波形解析に用いることができない。  今年こそ、この目的を達成すべく槻制のA/D変換ボードを使用して波形テープの再生を試みた。まず、このボードがどの程度の性能であるかを調べるために、槻制のA/D変換ボードによるもの、従来のOM再生機+N88日本語Disk Basic上のプログラムを用いたOM再生システムと、サウンドボードで再生した波形データをWindows上で比較し解析を行い、その信頼性を確かめた。

2. 方法

今回地震解析への使用を目的とするA/D変換ボードを使用して3つの地震波形をWave1(図1),Wave2(図2),Wave3(図3)、また同じタイムコードをそれぞれの方法で示し、合わせたものをWave4(図5)に示した。そしてこのA/D変換ボードの性能を知る為の比較材料としてOM再生システム、及びサウンドボードを用いたものをWave3,Wave4に示した。以下はその詳細を示す。

(1)A/D変換ボード ・自作DOS/Vマシン CPU Celeron 400MHz PCIバスに内蔵 ADM−682PCI(マイクロサイエンス株式会社、1998) LaBDAQ-9X版(株式会社 松山アドバンス、1998)
(2)OM再生システム・NEC PC9801 Vx-21,CPU V30 10MHz A/DボードはIOデータ製PIO-9045、N-88 日本語Disk basic
(3)サウンドボード ・GATEWAY2000 CPU pentium pro 200MHz           サウンドブラスタ互換とサウンドボード専用の波形読み編集 ソフトCoolEditを使用。

地震波形はOM型イベントレコーダーによってステレオ音響用カセットテープに、1イベント毎、地震波形の上下成分と水平2成分が連続したアナログデータ(音源帯域に圧縮)とし記録されている。これをWindows上のLaBDAQ‐9X版によって成分ごとに分割、CutWin32(数値・図形プロセッサ 活図Win32 Ver7株式会社エバ・グリーン,1997)を使ってグラフ化し波形データ比較を行った。この際それぞれの波形データは出力のレベルが異なる為に正規化の処理(ノーマライズ)を施して、それぞれをグラフ表示しデータの比較を行った。


 それぞれのシステムで解析した波形を以下に示す。
        Wave1 白山134 地震 (1198. 10/16. 22時19分)
        Wave2 白山140 地震 (1198. 10/17. 03時19分)
        Wave3 白山186 地震 (1198. 10/17. 12時04分)
        Wave4 白山330 時報パルス (1198. 10/25.12時00分)






3.考察

図4は旧システムによるWave3の再生である。これは再生点数が4カウントに1点と、今回の再生方式と違うために明確な議論はできない。しかしながら、旧システムにより再生された波が、今回どのように再生されるのか、違いを見てもらうために記載した。 では本格的に議論を始めよう。Wave 4は時間補正の為の時報を再生したものである。地震波形よりも波形が分かり易い為、各々の再生システムの比較第1弾として使用した。(図5) これから見るにA/D変換ボードは高周波成分も綺麗に再生可能である。ここでA/D変換ボードとOM再生システムの波形が異なっているのは、OM再生システムがサンプリング時間を決定する際、プログラムのLoop処理によりサンプリング時間の生成行うため、若干不安定なサンプリングレートになってしまうことが原因である。これに比べてA/D変換ボードやサウンドボードは水晶発振器を内蔵しているため正確なサンプリングが可能である。この問題を考慮し比較し易いよう、データ点数を調節したのが図6である。

ここでも分かるのがサウンドボードの高周波成分に対する再現性の無さである。やはり高周波をカットするフィルターがかかっているのだろう。しかも、サウンドボードの周波数特性が特定されていないため今回、議論の対象とすることが出来ない。事実、図8を見るに周波数帯によって波形が異なるように見受けられる。 続いて地震波形の比較である。ここでもA/D変換ボードが高周波成分の再現性において優秀なこと、サウンドボードが劣悪なことが読み取れる。さらにA/D変換ボードとOM再生システムに比べるとサウンドボードは明らかに形が異なる。図7を拡大した図8を見ると尚のこと分かり易いだろう。280~304点の波形は3つとも似ているのに対して、点でのピークの値が明らかに違う。これにより中周波が増幅されているのではないかと推測できる。

4.結果

OM再生システムプログラムは、N-88日本語DiskBasicとアセンブラ(機械語)で記述されているため機種に依存する。又、データ作成までに、1イベント約1時間程度時間がかかり、効率が悪い。そして、サンプリング決定法上のデータの不安定さを内包していることも分かった。一方、オーディオ変換ボードでは不安定さがない変わりに、人間の耳の特徴に合わせるためのフィルターがかかっている。これにより高周波成分の再生が出来無い。しかも周波数帯域によって増幅度が異なるなど波形解析には使用できない。これらと違いA/D変換ボードはPCIバスを持つ最近のコンピュータであれば、機種は限定しない。そして、コンピュータのメモリが多ければ、カセットテープの全データを一度に取り込む事が可能である。又、時間軸にも問題は無く、高周波を含めた地震波形を高い再現性で出力できた。信頼性が高い事も今回確認した。 今後A/D変換ボードによって得られたデータをプログラムによって自動的に収録できれば再生にかかる時間の面でも飛躍的に効率が良くなる。 次の目標は図9のように得られたデータを、Visual Basicの上のプログラムを介して図1〜3のように分割、保存する事に置きたい。

5.感想

今回十分に満足できる結果が得られて嬉しい。惜しむべくはさらに充実した解析や違う角度からの観察がしたかったのだが、新システムの構築の遅れから時間的余裕が限られた事が悔やまれる。しかし学ぶ事はとても多く、自分自身に形となり、知識と考え方が身についた事を誇りに思う。今回の結果をもとに更なる研究、環境の充実を目指していきたい。

6.謝辞

本研究を行うに当たって、あまりに未熟な私たちに満足足る研究ができるようご指導くださった本校一般物理岡本拓夫教官、前澤廣道技官に深く、深く感謝します。報告書にまとめるに当たって助言をくださった地球物理学研究会の皆様、本当に有り難うございました。

7.参考文献

 1)平野 憲雄 「OMカセットデータの再生読み取りシステム」
         (京都大学防災研究所付属北陸微小地震観測所)、1988
 2)平野 他 パソコンによるOM型レコーダーの再生と読み取りシステム、 1988
 3)金澤 他  平成9年度教育後援会奨励研究完了報告書、1998
       4)マイクロサイエンス A/D変換ボードマニュアル、1999
 5)エバ・グリーン 数値関数、図形要素項目マニュアル、1988
 6)松山アドバンス LaBDAQ-9X版マニュアル、1999

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